見た目が可愛らしく、色とりどりで華やかな印象を与える「金平糖」は、古くからお祝いごとの贈り物として親しまれてきました。
でも、なぜ金平糖が「縁起が良い」と言われるのでしょうか?
本記事では、金平糖が縁起物とされる由来や歴史的な背景をわかりやすく解説。
さらに、結婚祝いや出産祝い、ホワイトデーなど、実際にどんな場面で贈られているのか、その意味とともにご紹介します。
※なお、バームクーヘンが縁起物とされる理由について気になる方は、関連記事もぜひご覧ください。
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なぜ金平糖は縁起が良いとされるのか?その由来と込められた5つの意味
金平糖が縁起物として親しまれてきた背景には、長い歴史と深い意味が隠されています。
そのルーツをたどることで、なぜお祝いの場にふさわしい贈り物とされてきたのかが見えてきます。
ここでは、金平糖に込められた5つの代表的な願いや意味を、わかりやすくご紹介します。
その1:かつては貴族や武士だけが口にできた貴重なお菓子だったから
金平糖は、南蛮文化とともに日本にもたらされた西洋の砂糖菓子で、その名前はポルトガル語の「コンフェイト(confeito)」に由来しています。
当時の日本では砂糖が非常に高価だったため、金平糖はごく一部の上流階級――貴族や武士など――しか味わうことのできない特別なお菓子でした。
そのことから、「日々の暮らしが豊かで恵まれたものになりますように」という願いを込めて、贈り物として用いられるようになったとされています。
また、金平糖は希少な甘味であることから、体調不良時に食べられていた側面もあり、「健康を願う象徴」としての意味合いも込められています。
その2:手間ひまかけた製法が、縁起の良さと重なるから
金平糖は、完成までに非常に長い時間を要するお菓子として知られており、一般的に仕上がるまでには約2週間かかると言われています。
その製造には高い技術が必要で、一人前の職人になるには20年ほどの修行が必要とされるほど、奥深い世界です。
こうした、じっくり時間をかけて一粒ずつ丁寧に仕上げていく工程は、まさに「縁起が良いもの」としての象徴。
ゆっくりと角をつけながら星形へと育っていく姿は、子どもの成長と重なり、「子孫繁栄」への願いが込められています。
さらに、長年かけて技を磨き続ける職人の姿は、家庭や夫婦関係の成熟にも通じ、「夫婦円満」を象徴するものとしても、金平糖は縁起が良いとされているのです。
その3:トゲのある形が「魔除け」として重宝されてきたから
金平糖の特徴であるトゲのある角ばった形は、古くから災いを遠ざける力があると信じられ、「魔除け」の縁起物として親しまれてきました。
中でも「鬼が嫌う形」とも言われ、家庭の無病息災や厄除けを願って贈られることも多いのです。
こうした背景から、金平糖は贈答品としてさまざまなシーンで選ばれています。
その4:彩り豊かな色合いが「福」を呼び込むとされているから
金平糖といえば、やはり目を引くカラフルな見た目が魅力ですよね。
特に5色以上のものは「開運菓子」としての意味合いもあり、運気を呼び込む縁起物として扱われることがあります。
これは陰陽五行説における「五色の思想」とも通じる考え方でしょう。
たとえば、七夕の歌に登場する「五色の短冊」のように、色には意味や願いが込められてきたという日本の文化ともつながっています。
また、結婚式などの慶事では、紅白の金平糖が「おめでたい色」として好まれる一方で、同系色で統一されたスタイリッシュな金平糖も人気があります。
贈る場面や相手に合わせて、色合いを選べるのも魅力のひとつです。
その5:皇室行事でも用いられた、由緒正しい贈り物だから
金平糖が格式ある贈答品として扱われた最も古い記録のひとつが、明治時代に見られます。
明治天皇と昭憲皇太后の銀婚式(結婚25周年記念)の祝典において、参列者への引き出物として金平糖が贈られたのです。
このとき金平糖は、「ボンボニエール」と呼ばれる装飾的な菓子器に収められていました。
ボンボニエールとは、ヨーロッパで結婚祝いや出産祝いの際に砂糖菓子(ボンボン)を贈る風習から生まれたもので、その菓子を入れる器のことを指します。
この風習が日本にも伝わり、皇室行事を通して取り入れられたことで、金平糖は「祝いの象徴」としての地位を確立しました。
こうした由緒正しき背景が、金平糖が縁起物として広く親しまれている理由のひとつとなっています。
金平糖を贈るのにふさわしいタイミングとは?
結婚祝いに
結婚式の引き出物として、金平糖は昔から親しまれてきた縁起の良い贈り物です。
「夫婦円満でありますように」「末永く子どもに恵まれますように」といった願いが込められており、新たな門出を祝うのにぴったりな意味を持っています。
また、明治天皇と昭憲皇太后の銀婚式でも金平糖が引き出物として用いられたという逸話があり、その品格と格式の高さも魅力のひとつ。
大切な方への慶びの贈り物として、安心して選べる品です。
出産祝い・内祝いに
新しい命の誕生を祝う出産祝いの場でも、金平糖は縁起物として重宝されています。
「子孫繁栄」という意味を持つことから、赤ちゃんの健やかな成長や、家庭の幸せを願って贈るのに最適です。
そのやさしい甘さや、ころんとした可愛らしい見た目は、赤ちゃんの無垢さや愛らしさを思わせるもの。
シンプルな材料で作られているため、産後のお母さんにもやさしい贈り物として喜ばれます。
ホワイトデーに選ばれる理由
近年、ホワイトデーの贈り物として金平糖が注目を集めています。
その理由のひとつは、じっくりと手間ひまをかけて作られる金平糖の製法に、「末永く続くご縁」への願いが込められている点です。
また、金平糖はキャンディの一種と見なされることもあり、「割れにくい=壊れにくい関係」を象徴するものとして、大切な人との絆を長く保ちたいという思いを込めて贈られるケースも増えています。
華やかで上品な見た目は、本命へのプレゼントにはもちろん、控えめなデザインを選べば義理チョコのお返しとしてもぴったりです。
長寿祝い・父の日・母の日のギフトとして
金平糖は、健康や厄除けを願う縁起物としても親しまれており、長寿祝いはもちろん、父の日や母の日など、感謝の気持ちを伝える場面にもふさわしい贈り物です。
たとえば父の日には、ネクタイやハンカチといった実用品に金平糖を添えることで、実用性と心のこもった気遣いを両立したプレゼントになります。
小ぶりで気軽に贈れる金平糖は、さまざまなシーンで活躍してくれる、万能な縁起菓子といえるでしょう。
まとめ
金平糖は、その可愛らしい見た目だけでなく、そこに込められた深い意味から、古くよりさまざまなお祝いの場面で選ばれてきた縁起の良いお菓子です。
夫婦円満や家族の繁栄、健康祈願、さらには災いを遠ざけるといった多様な願いが込められており、見た目以上に豊かな意味をもっています。
長い時間をかけて職人の手で丁寧に作られる工程や、由緒ある歴史、そして独特のトゲのある形状など、すべてが縁起物としての価値につながっています。
近年では、結婚祝いや出産祝いはもちろん、ホワイトデーや長寿祝い、父の日・母の日など、さまざまなシーンで贈られる定番のギフトとなっています。
素材はシンプルで日持ちもよく、サイズも控えめなため、贈る相手を選ばないのも嬉しいポイントです。
「どんな縁起物を選べばいいか迷ってしまう…」というときには、願いをそっと託せる金平糖を選んでみてはいかがでしょうか。